仕組みを理解せず実装すべきではない
情報システム部の現場では「見た目が正しければ動くはず」といった思い込みによるミスが意外と多く発生しています。
とあるお客様においてLinux上のメールボックスに配信されたメールを別のメールに転送するというシステムがあります。
先日、お客様よりメールボックスの追加と転送先のメールアドレスの依頼がありました。
通常だと下記の手順で実装します。
- ユーザー(=メールボックス)を作成する
- /home/<ユーザー名>/.forwardファイルに転送先メールアドレスを1行ずつ記載する
しかし、若手エンジニアは下記のような手順で実装しようとしていました。
- /home/<ユーザー名>ディレクトリを作成する
- /home/<ユーザー名>/.forwardファイルに転送先メールアドレスを1行ずつ記載する
なぜ上記のような手順になってしまったのか詳細は不明でしたが、既存のメールボックスを確認すると/home/<ユーザー名>ディレクトリがあって.forwardファイルに転送先メールアドレス記載されている。
このことから/home/<ユーザー名>のディレクトリがあればよいと判断したのかもしれません。
これはまるで、自宅でインターネットを使いたくて、見た目がそれっぽいモデムルーターを買ってきて電源に挿せば、繋がると思っているようなものです。
見た目はインターネット接続できている環境と変わりはないかもしれませんが、実際には回線業者やインターネットプロバイダーに申し込みをして適切な設定がされたモデムルータを受け取って設置して初めてインターネット接続ができるのです。
このような失敗を起こさないためには何が必要でしょうか。
一番大切なのは、「なぜこの作業が必要なのか」「裏側で何が起きているのか」を理解しようとする姿勢です。
自宅からインターネット接続するには何が必要なのかを事前に調査していれば回線業者やインターネットプロバイダーへの申し込みが必要なことは分かると思います。
「.forwardファイルを作ればメールが転送される」というのは仕組みの一部でしかありません。
そもそもLinuxにおけるメール配信とはどんな構造なのか
そのユーザーがどうやってメールシステムと連携しているのか
もちろん全ての仕組みを理解することは不可能ですがある程度の仕組みを理解した上で実装に臨む必要があります。
こういった基礎的な理解があって初めて、正しく設計・運用できるのです。
「仕組みを知ろうとする姿勢」は、単なる知識の習得ではなく、どの現場で応用できる「経験値」へと変わっていきます。
そして、その経験値を支えているのは、いつでも「なぜ」と問い続ける力に他なりません。