仕組みを理解するために言葉に敏感になろう

ITの世界には多くの専門用語が存在します。
全ての用語においてではありませんが、多くのものには厳密な定義があり、その理解の差がシステム設計やトラブル対応に大きな影響を与えることがあります。

例えば「ユーザー名」と「ユーザーID」。あまり深く考えずにこの2つを混在させて使ってしまう人は少なくありません。
Linuxにおいて「ユーザーID(UID)」とは、ユーザーを一意に識別するための数値のことを指します。
一方、「ユーザー名」は人が識別しやすいラベルのようなもので英数字で構成されます。
システム内部では、アクセス権限やファイルの所有者などはユーザー名ではなく、UIDで管理されているのが一般的です。
この2つの違いを曖昧にしたままでは、例えばファイルの所有権を変更したり、アクセス制御を設定する際に想定外の動作が起きる原因になります。

他にもネットワークにおける「ルーティング」と「スイッチング」や監視における「サービス監視」と「プロセス監視」などもそうです。
「ルーティング」と「スイッチング」は転送するために用いる識別情報がL3レベル(IPアドレス)かL2レベル(MACアドレス)による違いです。
この区別がついていないと、ネットワークの設計やトラブル時の調査で大きな誤解が生まれます。
「サービス監視」は該当サービスが起動しているかどうかを監視するものですが、「プロセス監視」は起動しているプロセス数を監視します。
また、サービスが起動していればプロセスは存在しますが、プロセスの中にはサービス起動していないものもあります。
例えばメモ帳を起動すればnotepad.exeというプロセスが起動しますが、メモ帳というサービスは存在しません。

ITにおいて「なんとなく伝わればいいだろう」という言葉の使い方は危険です。
言葉の使い方が曖昧な人は、仕組みの理解も曖昧なことが多いように感じます。

ITエンジニアにとって「仕組みを理解する」というのは、単なる知識の蓄積ではありません
それは「目に見えない裏側で何が起きているのか」を真摯に理解しようとする姿勢に他なりません。
言葉に敏感であることが真のITプロフェッショナルになるための必要条件と言っても良いのではないでしょうか。

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