マネージャーの「忙しさ」を分解する
マネージャーの皆さんには「成果に対して思考と意識と言葉と行動と環境作りの全てを注いでください」をお伝えしていますが、多くの会社、組織でマネージャーの皆さんの忙しさには目に余るものがあります。
成果に集中したくても、日々の業務に追われて“考える時間すら取れない”という声をよく耳にします。
そこで今回は、マネージャーを悩ませる「忙しさ」の正体を4つに分類し、それぞれに応じた具体的な対処法を整理してみました。
- 作業系:承認作業、資料作成、メール処理
- 会議系:情報共有会議、進捗定例会議、意思決定会議、ブレーンストーミング
- 対応系:メンバーからのエスカレーション、相談事、1on1
- 思考系:組織改善、目標設定、優先順位の判断、戦略策定、育成方針
そして、これらの「忙しさ」を軽減するためのアプローチは、大きく2つです。
・権限の委譲:自分で抱えず、他のメンバーに役割や判断を任せる
・作業の見直し:効率化・自動化・廃止によって、手間を減らす
- 作業系:承認作業、資料作成、メール処理
作業系の忙しさは意識次第で大きく削減できるところです。
まずはその作業をやらないことで誰がどのように困るのかを改めて判断し、思い切って「やらない」決断をしてください。
どうしてもやらなければならない作業は自動化、効率化できる余地がないか考えましょう。
その上で改めて「マネージャー自身がやらなければならない作業なのか」を改めて判断し、マネージャーが必ずしもやる必要がなければ極力メンバーに委譲しましょう。
「これは複雑だから自分がやらなければならない」と仰っていた業務もよくよく聞いて書き出してみるといくつかの判断ポイントがあるだけでマニュアル化できることも意外とあるものです。 - 会議系:情報共有会議、進捗定例会議、意思決定会議、ブレーンストーミング
会議系も大きく削減できるところです。特に会議を削減するとマネージャーだけでなく参加者であるメンバーの時間も削減できることからチーム全体の生産性向上にも大きく寄与します。
情報共有会議はチャットツールによる共有に置き換えることを検討してください。
定例会議も報告内容を口頭説明ではなく、フォーマット化して記入した資料を事前に配布し、議論すべきことのみを会議の中で行うことで大分時間を省略できます。
意思決定会議もある程度信頼できるメンバーに委譲しても良いのです。会議後にメンバーから報告を聞いた上で最終的にマネージャーが判断すれば会議に最初から最後まで出席する必要はありません。
ブレーンストーミングも必ずしもマネージャーが出席する必要はなく、メンバーに委譲して出た意見を取りまとめた上で結果の報告を受けるということも可能です。 - 対応系:メンバーからのエスカレーション、相談事、1on1
メンバーからのエスカレーションや相談事はマネージャーとして最優先で対応すべき業務になります。
ただし、一次エスカレーション先、最初の相談先、1on1についても別のメンバーに委譲することは検討してください。 - 思考系:組織改善、目標設定、優先順位の判断、戦略策定、育成方針
思考系の業務については4つの「忙しさ」の分類の中で最も意識していただきたい業務になります。
別の記事でも紹介しましたが業務を優先度と重要度の2軸に分類した際に最も意識すべきは「重要度が高くて優先度の低い業務」です。思考系の業務の多くはこれに該当します。
多くの人は「優先度が高く重要度の高い業務」と「優先度が高く重要度の低い業務」に振り回されて思考系の業務になかなか着手することが出来ないのです。
ただし、最終的な判断はマネージャーがすることになりますがマネージャーが最初から最後まで全てをやる必要はありません。
成果を意識しながらメンバーに委譲することを常に考えて下さい。
すべての業務を同じように対応していたら、時間と体力がいくらあっても足りません。
頑張ることがマネージャーの責務ではありません。成果を出すことこそがマネージャーとしての責務です。
マネージャーが本当に集中すべきは「思考」と「判断」であり、そのためには“やらない勇気”と“委ねる決断”が必要です。
マネージャー自身が時間を取り戻し、どれだけ成果に集中できるかがチームの成果に直結するのです。
だからこそ、「忙しさの正体」に目を向け、今日から少しずつでも時間を取り戻すために勇気と決断をしていただきたいのです。